Killing Heart
阿修羅が部屋の戸を開けると、見かけたことのない黒色の長髪の男性が腕組みをして立っていた。
その瞳はとても笑っていて、ただ恐ろしさが伝わってくる。
私はまずいと思って阿修羅に近寄ろうとした。
だが、私の目には男性の後ろにいる草兎くんの姿が映った。
「フフフ、初めまして。僕は夷餡って言うんだ」
「夷餡‥」
「君に殺された筈なんだけどねぇ、ほら僕無敵だし」
阿修羅は名を聞いてかなり驚いた。
夷餡、彼は阿修羅に殺された筈と軽々しく口にする。
やはり阿修羅は人殺しをした鬼、私はそんな奴に心を許したのだろか。
「だけど、僕は君の敵でも味方でもないんだよ。それだけは教えてあげてもいいけど?」
「ハッ、調子乗ってんじゃねーよ、また殺されたいのか?」
「フフフ、鬼さんは相変わらず高血圧なんだから♪」
と、夷餡は冗談で喋っているのか私には理解出来なかった。
彼はスッと腰に掛かる鞘から刃を抜いた。
殺る気だ、この人。
一方、阿修羅の方は待ってましたと言わんばかりに刃を抜く。
鞠弥さんが場所を変えろ、と冷や汗かきながら呟く。
きっとこの人も強いんだ。
もし阿修羅が死んでしまったら?
私はお師匠に見せる顔がない。