Killing Heart
「ごほっ!!ハァ‥」
「ちょっ!貴方大丈夫!?」
持病の発作によって吐血をした。
抑えていた手のひらを見ると赤く染まっている。
俺は近付いてくる女を避け、その場を去った。
こんな体さえなければ、鬼は再び蘇るだろう。
「なんなのよ、あいつ!!」
「珍しい、夕露(ユウロ)ちゃんが怒るなんて」
水を汲んで寺に戻ってきた。
私が怒った表情を見て、お師匠は笑う。
あまりにも恥ずかしくて、私はとっとと仕事に戻ろうとした。
「何か気になることでもあったのですか?」
「‥鬼を見たのです」
「鬼?」
「赤い眼差し、白い髪‥お師匠には分からないんですか!?」
私は思わずお師匠に八つ当たりをしてしまった。
ハッと、口を塞ぎ慌てて部屋に戻った。
あんなの初めて見たんだ。
誰に話してもきっと信じてくれないだろう。
鬼なんて、この世にいない。
スッと、釈杖を壁に立てかけ、じっと体育座りをした。
今頃、お師匠は寺の中心部でお経を唱える頃だろう。
「夕露、ちょっとついて来て下さい」
「あ、はい!!」
だが、私の予想が外れてお師匠が目の前に現れた。
それも急ぎで。