Killing Heart
すると、
鬼は刀を横にし、目元の近くで構えた。
「こんな大人数きりねぇよ」
冷気が鬼の意志に答えるように刃に宿り始めた。
もしかしてこれが、お師匠が伝授した流派?
「死を罪の対価として‥聖氷の妖精!」
一瞬にして、忍びたちが氷の柱に飲み込まれていった。
それは妖精が通り過ぎたように、何もかも氷は散った。
「相変わらず腕は衰えてませんね」
「そうだな、氷麟が何より楽しみやがった」
お師匠は私の頭を撫でて離れた。
私には鬼が言っていることが理解できない。
こんなの流派じゃない、大体あの氷は‥
鬼はゆっくり氷麟を鞘に収めた。
「さて、そろそろ行くか」
「もう行くのですか?」
「あぁ、俺が居たら迷惑だろう?」
「‥阿修羅」
そう言って鬼は煙草を吹かしながら去ろうとした。
少しだけお師匠の表情に寂しさが浮かんだ気がした。
すると、
「せめて一夜だけ、居てもらえますか?」
「‥旨い酒あるんだな?」
「もちろん」
鬼は仕方ねぇな、なんて言いながら寺内へ戻っていく。
私はお師匠が笑っている姿を見れて嬉しかったが、鬼が一つ屋根の下に居ると思うとぞっとする。
仕方ないんだけどね‥。