サモンズ
「それはないわ。これは1人1人を識別する意味も込めているの。だから誰かを守ったりする事は出来ないわ。」
やっぱりおかしい。それでは何故自分は生きている?それに何故母は生きている?
「わかんねぇことばっかだな…。で、なんで能力者を探してるんだ?」
「あぁそれなんだけど、あなた達には少しついて来て欲しいの。大丈夫かしら?」
自分や母の事、いきなり現れた澪の事、色々あり過ぎて頭がいっぱいになりながらも少し冷静になって少女を見てみた。怪しげな雰囲気はない事を確認したのと同時に、刃に電撃が走った。よくよく見てみればこれがなかなか可愛かった。整った顔立ちに、髪は長く腰ぐらいまである。不思議な格好をしているのだが、変だとは思わなかった。
「まぁ多分大丈夫だろ。蓮も大丈夫だろ?」
紅くなっているだろう自分の頬を隠すため話を進めた。
「僕?大丈夫だよ。親には刃の所に行ってくるって言ってあるし。そんなに時間はかからないんでしょ?」
蓮も行く気のようだ。そう言えばどこへ行くのだろう?
「長くはならないと思う。じゃぁ行きましょう。」
そう言うと、澪は歩き出した。
「おいそこのガキども待ちやがれ。」
野太い声が焼け野原に響き渡った。その声を出した男は崩れたがれきの上で叫んでいる。
「ここいら一帯を燃やしやがったのはどいつだ?」
そう言ってこちらを見下ろしている。
「ねぇ刃。あれってさっきの能力者じゃない?」
ひそひそと男に聞こえないように問いかけてきた。
「あぁそうだな。あの腹立つ声は忘れれそうにねぇぜ。」
刃はそう言って、男に視線を戻した。
「誰だって聞いてんだよ!!てめーら以外に居ねぇんだからな」
「私よ。何か文句でも?」
澪は臆せず答えた。しかし、刃はこのとき彼女の足が微かに震えているのに気付いていた。
「あぁ!?文句があるかだと!?たりめーだろーが!誰に断って能力使ってんだ!?」
どうやら男は澪が能力を使って好き勝手やっていたと思っているらしい。
「なに言ってやがんだこのバカ能力者。澪は別に力を使った訳じゃねぇよ。」
「んだと!!?この俺様をバカ呼ばわりしやがったな!?」
「バカにバカって言って何が悪りぃんだ?」
「後で思い知らせてやるから待っててやがれ!!先にこのクソガキを葬ってやる。」
そう言って、澪を指差した。
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