ひとなみ
マサキと繋いでいた手が何だかすーすーして、なんとなくジャケットのポケットに突っ込んだ。
ぐー、ぱー、ぐー、ぱー。
ポケットの中で、何度も指を動かす。
ぐー、ぱー、ぐー、ぱー。
まーちゃん、早く戻ってきて。
ここはマサキが住んでいる町。
ここには、紗香が知っている人は、マサキ以外に一人もいない。
半年ぶりに、会ってるのになぁ。
片道、六時間もかかったのになぁ。
彼氏や彼女よりも友達を優先したり、
彼氏や彼女の存在を周囲に隠したがる人は、
紗香の友人にもたくさんいて、
彼らの言うことは紗香にもとてもよくわかった。
マサキも、そういう人なだけなんだ。
彼らに対して、友達よりも自分を優先してほしい、
と思うことは、
それは私のワガママだ。
紗香は地面に落ちている紅葉を辿るように、うつむいたまま足を進めた。
ぐー、ぱー、ぐー、ぱー。
まーちゃん、私ワガママ言わないよ。
ぐー、ぱー、ぐー、ぱー。
まーちゃん。もみじ、キレイだよ。