お兄ちゃん、すきだよ。
「もー、やっぱり!」
怒ってるのに、笑顔の怜くん。
厚手のダッフルコート、ニット帽、そしてぐるぐる巻きになったマフラー。
その全てが、私の心を温かくしてくれる。
「怜くん、いってらっしゃい。」
「うん、じゃあね春乃。」
手を振り見送る、怜くんの後ろ姿。
それいつまでも眺めながら、幸せな気持ちになっていった。
「…くしゅん!」
くしゃみをして、我に返る。
私も早く用意をしないと、優との約束に遅れてしまう。
足音をたてながら居間へ入り、一気に朝ごはんを食べる。
そんな私を見て、お母さんはあきれ顔だ。
顔を洗って、歯を磨いて。
化粧をして、髪型をセットして。
そしてコートを羽織って、私は家を出た。