Devil's Night
12時を過ぎた頃、目の前にそびえる大きなビルから、いかにも大企業のエリートらしいグループが出てくる。とても知的に見える7人の男女。
きらめく空気をまとったその一団は、まるでトレンディドラマのワンシーンのように、私の前を颯爽と通りすぎ、洗練された英国調のカフェへと吸いこまれていく。
もちろん彼らは、私が売ってるワンコインランチになど見向きもしない。そんなことはわかっているのに、そのグループの中のひとりをじっと目で追ってしまうのだった。
背の高い、笑顔の爽やかな男の人。頼りがいのありそうな、大人の雰囲気……。生まれて初めてのひと目惚れの相手を、私は見ていることしかできなかった。
――大学でうんと勉強して、あの人のいる会社に入りたい。
あの人のいるオフィスで仕事ができたら、どんなに素敵だろう。そんな野望のような想いを胸に秘め、毎日、彼を見ていた。