Devil's Night
 
「弁当、もう売り切れ?」


 その声にハッとして顔を上げると、眠る前に毎晩のように思い描く顔が、目の前にある。


 ほとんど条件反射みたいに目から涙があふれ、ポロポロと頬をすべった。


――私、なんで泣いてるんだろう。


 自分でも驚いた。


「どうか……した……の?」


 彼が唖然としている。


 私はあわてて涙をぬぐいながら、謝った。


「すみません。お弁当、今日はもう全部売れてしまって」

< 113 / 359 >

この作品をシェア

pagetop