Devil's Night
 
「いや。弁当は別にいいんだけど……。何かあったの?」


 心配そうに尋ねてくれる彼に、
「私、このバイト、今日までなんです」
とだけ伝えた。


「そっかぁ……。メランコリックになっちゃった?」


 その瞳が優しくてジンとなる。


「でも、それって不幸中の幸いかも」


「え?」


――幸い?


 相手にされないことは予想していたけれど、『幸い』はあんまりだ。


 呆然としている私に、彼が名刺を差し出した。会社名と名前の間のスペースに『090』で始まる番号が書いてある。


――ケータイ番号……。


「フラれたら、顔、合わせづらいから」


 その照れくさそうな笑顔を見て、ようやく彼の気持ちに気付く。
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