Devil's Night
彼とデートする日を夢見ながら、生まれて初めて手にしたバイト料で白いスプリングコートを買った。それに合わせて新しいパンプスを買ったら、封筒の中のお金はほとんどなくなった。
――こんな無駄遣いがバレたら、お母さんに怒られるだろうな。
この大きな紙袋をどうやって隠して家に入ろうかと、頭を悩ませながらも、心が弾んでいる。
そのとき、風が騒いだ。ひときわ強い風が、びゅっと吹き、ぶらぶらさせているブティックの袋が強く引っ張られたような気がした。そして、ようやく気がついた……。ゴーストアパートの前まで来ていることに。
何となく、その建物を見上げた。
もう、何年もカイを見ていない。今夜もそこに彼がいないことを確かめるために、見上げた。
「あ……っ……」
2階の窓に、カイの姿がある。
一瞬、全身が固まったような気がした。