Devil's Night
 
 昼前に領事館から役人がふたり来た。


 ひとりは面識がある。絵莉花と同じ日本人幼稚園に娘を通わせている外交官だ。発表会や運動会で会ったことがある。


 このあたりに邦人向けの幼稚園はひとつしかない。海外での日本人社会は異常に狭く、日本では滅多に知り合う機会がないような相手でも、普通に話をしたりすることがある。政府関係者だったり、大きな会社の重役だったり。


「外務省でも、できることは全てさせてもらいます」


 彼は沈痛な面持ちで言った。でも、具体的に何をしてくれるのかは説明がない。


 いつでも連絡がつくという電話番号だけを残し、彼らは去って行った。
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