Devil's Night
結局、そのとき、夫が交渉してキンダーガーデンの先生に連絡メモを書いてもらうことになった。夫はどんなに夜遅く帰って来た日でも、翌日には必ずメモを和訳しておいてくれる。
今朝も、殴り書きのような英語の下に整然と並ぶ日本語をしみじみ眺めた。彼の優しさは、結婚して6年たった今も変わらない。
夫が書いてくれたそのメモを読んで、私は明日、幼稚園でハロウィンパーティーがあることを知った。各自、好きな仮装をして幼稚園へ行くらしい。
「絵莉花、魔女になりたい」
そう言った娘のリクエストに応えるのは簡単だった。こちらでは、魔女や黒猫などといった定番の仮装衣装は、オモチャ屋やデパートで手軽に買うことができる。
絵莉花のためにいちばん小さいサイズを買って、さらにすそ上げした。
「ママー。見てー!」
魔女に変身した自分の姿を鏡に映して、ニコニコしている娘を、私は大きなマントルピースの前に座って見ていた。
こんなとき、幸せだなぁと、しみじみ感じる。多少の不便はあっても、静かな環境で家族と一緒に生活できるのだから。