Devil's Night
「ママ。リリちゃんのおケガも治してあげて」
ソーイングボックスを片付けようとしたとき、絵莉花がお気に入りのウサギのマスコットを差し出してきた。
リリちゃんというのは、娘が2歳のときにフェルト生地で縫って作った、ウサギの人形だ。絵莉花は他のぬいぐるみや人形より、このマスコットを気に入っている。
どこへ行くにもポシェットに入れて一緒に連れていくから、もうボロボロだ。何不自由なく育ったはずなのに、こんな粗末なマスコットを大切にしている我が子がいじらしい。
「ほんと。リリちゃんのお耳、痛そうだね」
耳が破れかけているマスコットを受け取り、フェルトと同系色の糸を探す。
不意に、絵莉花が
「あ。猫ちゃん」
と、声を上げ、窓の方へ駆けよった。