Devil's Night
 
 幼なじみの幸せを心の底から喜んであげられない精神状態にある自分が悲しい。


 隅のボックス席へ駈けて行く彼女のうしろ姿が、幸せでたまらないと叫んでいるような気がした。香織がソファで英字新聞を広げている男性の肩を叩くと、彼女に何か耳打ちされた男性がゆっくりとこちらを振り返った。


 整った顔に穏やかな微笑を浮かべている、その顔を見て、背筋が凍りついた。


「カイ……」
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