Devil's Night
 
 あの夜、私は恐怖で錯乱しながらも、ほとんど衝動的に、昼間、名刺をくれた相手に電話をかけた。今は私の夫となっている、饗庭省吾に。


 彼は、電話で状況をうまく説明できない私を、迎えに来てくれた。


『何かあったの?』


 こんな時間に呼び出しておいて、何と答えればいいのかわからなかった私は、ふるえながら、
『知らない男の人につけられてたような気がして、怖くて電話してしまいました』
とウソをついた。


 カイに関わることは話したくなかった。好きな人に、いきなり異常で説明のつかない話はできない。


 特にその夜のことは、私自身、わけがわからない状況だった……。
< 161 / 359 >

この作品をシェア

pagetop