Devil's Night
『そうか、怖い目にあったんだね』
彼はそれ以上何も聞かずに、私を自宅まで送ってくれた。
カイに汚されたのが事実かどうかわからないまま、漠然とした嫌悪と恐怖に支配されながら歩いていた。
『知らない男の人ににつけられた』と言ったせいだろうか、異性に怯えている私の気持ちを察するように、彼はずっと私と距離を置いて歩いている。
玄関先で遅すぎる帰宅を父に叱られたときも、隣で、
『僕が遅くまで引っ張り回してしまいました』
と、かばってくれた。非常識な男だとののしられても……。
彼の優しさが心に沁みて、泣くことしかできなかった。