Devil's Night
 
 日本を離れた後も、私の心に重くのしかかっていた存在、カイが目の前にいる。……幼なじみの夫となって。


 立ち尽くす私の前にふたりが歩いてきた。


「久しぶりだね、美月」


 にっこり笑うカイを、香織が不思議そうに見上げた。


「櫂斗さん、美月と知り合いなの?」


 カイは曖昧に笑うだけで、香織の質問には答えない。妻が不信感を抱いても相手にしないような態度に冷淡さを感じる。


「小さい頃、一緒に遊んだの。それだけ」


 香織の気持ちを考え、つい口走っていた。
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