Devil's Night
 
「なんだ。そうだったんだぁ」


 香織がどこかホッとしたように笑う。中学生のとき、偶然カイを見つけた書店で私が言ったことなど覚えていない様子だ。


「おめでとうございます」


 私はカイに向かって、できるだけ事務的にお祝いを言った。


「ありがとう」


 カイが無表情になって、目を伏せる。


「香織。幸せになってね」


「うん!」


 香織は満面の笑みを浮かべてうなずいた。

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