Devil's Night
――大丈夫。きっと省吾さんが助けてくれる。
窓の外に見える雲海を、にらむように見つめていた。
食後のデザートがサービスされたあと、しばらくして機内の照明が落ちた。が、映画は見る気がせず、かと言って眠れそうにもなかった私は、乗務員を呼び止め、読み物を適当に見つくろってもらった。
「こちらはいかがでしょう?」
すすめられるままに、日本語のインテリア雑誌と、週刊紙を受け取る。
「ありがとう」
薄い冊子を数ページめくったとき、通路に立ち止まる人の気配を感じた。
――カイ……!
彼が立っていることに気付いてギョッとした。
「何?」
動揺を隠して冷たく聞いたが、カイはここに来た理由を答えずに、視線でモニターを示す。
「見ないの?」
私は体が固くなるのを感じながら、黙って首を振った。
考え過ぎかも知れない。が、香織から私の居場所を聞き出して追いかけてきたような気がしてならないのだ。
「カイ。どうしてアメリカにいたの?」
つい、問い詰めるような強い語気で聞いていた。が、彼は私が感情的にしゃべるのをむしろ楽しんでいるかのように涼しく笑っている。
「仕事だよ。香織から聞かなかった?」
香織は『学会があって』と言っていた。学者か医師にでもなったのだろうか。
――それにしても、同じ便で帰国だなんて……。
どうしても偶然とは思えない。