Devil's Night
 
 それ以来、カイはしばしば私の前に姿を現すようになる。


 学校からの帰り、ゴーストアパートの2階にある窓を見上げると、必ずカイがいた。彼は、遠くをぼんやり見ていて、私に気付かないときもある。見とれてしまうような笑顔を浮かべ、私を手まねきすることもある。


 私は彼に呼ばれるまま、ゴーストアパートに出入りするようになった。


 カイのことをもっと知りたかったから。


 けれど、どんなに仲良くなっても、カイは自分のことをしゃべろうとはしない。彼の口から、家族の話も、友達の話も聞いたことがない。どこの町に住んでいて、どこの小学校へ通っているのかも知らなかった。たったひとりで、この廃墟で暮らしているみたいに見える。


 不可解なことばかりだった。


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