Devil's Night
「ありがとうございました」
車を降りるとき、カイに向かってできるだけ事務的にお礼を言った。すると、カイは黙って車を降り、私のスーツケースをトランクから降ろした。
「おかえり、美月」
と言って、カイが薄く笑う。
その意味ありげな笑顔に、トランクに伸ばした手が一瞬固まった。その手の上に、そっと、カイの手が重ねられる。え? と、反射的に手を引きながら、香織のいる車内に目を走らせていた。