Devil's Night
 
 香織はサイドミラー越しに、悲しそうな顔で私たちを見ていたが、やがてあきらめるように、その寂しそうな視線をゆっくりと正面に戻す。


――違う……。


本当は、今すぐ弁解したかった。けれど、カイを悪者にして友情をつなぎとめたとしても、香織は喜ばないだろう。


「カイ。お願い。香織を悲しませないで」


 声を押し殺し、カイの目を見て頼んだ。


「香織は何を見ても、僕から離れたりしない」


 酷薄な笑みを浮かべて答えるカイから、私はスーツケースを奪い取った。
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