Devil's Night
 
「ただいま」


 玄関に入った途端、肩の力が抜けた気がした。懐かしい我が家の匂いに心がほどけ、張りつめていた気持ちの糸が切れたように、驚くほど唐突に涙があふれる。


「美月なの?」


 奥の方で母の声がする。その突然の帰国に驚いたような声を聞いて、急いで涙をぬぐった。今は母にさえも真実を告げられない苦しさを飲み込む。
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