Devil's Night
 
 
 不意に灯った玄関の明かりに、思わず目を伏せていた。両親にウソをつきとおし、絵莉花のことを隠しおおせるだろうか。


「美月、省吾君は?」


 父の怪訝そうな顔を直視できないまま、
「私、このところ体調が悪くて。しばらくこっちで静養することにしたの。省吾さんは仕事があるし、絵莉花はどうしても向こうの幼稚園を休みたくないって言うから……」
と、陽人とふたりだけで帰国した理由を告げた。それは帰国前に必死で考えた嘘だったが、両親は私の言葉を疑うことより、孫との予期せぬ再会に気を取られているようだった。


「ハルちゃん、ほら、上がりなさい」 


「おなか、空いてないか?」


 あっという間に両親が、陽人を玄関からリビングへと連れ去る。
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