Devil's Night
私は安堵と疲労のため息をついて、重い荷物を2階の自室へ運んだ。室内は、1年前に帰国したときと変わらないが、心なしかホコリっぽい気がする。空気を入れ替えようと、窓を開けた。冷たい夜気が心地よくて、ぼんやりと星空を見上げる。
「ニャア……」
突然の猫の鳴き声にハッとして庭に目をやった。
――あの猫……。
カイが飼っていたロシアンブルーにそっくりな灰色の猫がそこにいた。絵莉花が連れ去られた日に、アメリカで見たのとそっくりな猫……。その瞳の色が、機内のモニターに映った少女のそれに酷似していることに気付いてゾッとした。
猫は戦慄する私を見て満足したかのように、ゆっくりと腰を上げる。しなやかな体が植木を駆け上がり、塀を越えて消えて行った。