Devil's Night

「それじゃ。ゆっくりおやすみ」


 夫はそれだけしか言わない。まだ、絵莉花を見つけ出す手がかりは何もないのだとわかる。今夜だけは絵莉花のことを話すのはやめよう、と心に決めた。お互い苦しいだけだ。


「おやすみなさい」


 私も静かに言って電話を切った。


 絵莉花はもう見つからないのだろうか……。絶望の深淵へと落ち込みそうになる気持ちを必死で支えた。


「さ。ハル。寝んねしようね」


 何とか笑って陽人を着替えさせ、ふたりで眠った。
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