Devil's Night
でも、カイは私がどんな話をしても、からかったりしないで、ただ、大人びた顔をして話を聞いてくれる。
このどこか謎めいた少年への憧れは、私の中で自然に育っていった。
「今の美月にとっていちばん大切な物って何?」
こうやって、カイは時々私に質問をする。私の性格や好みを確かめるように尋ねながら、その透きとおる薄茶色の瞳に、じっと見つめられるとドキドキする。クラスの男の子の誰に見つめられたって平気なのに。
「カナリアだよ。お誕生日に2羽、買ってもらったの。カイは?」
そう聞き返すと、彼は少し考えるように長いまつ毛を伏せた。
「ブルー……かな……」
「ブルー?」
「僕が飼ってる猫だよ」
カイのそばにはいつも、大きな目をした美しい猫がいる。
「ああ。あのグレーの、キレイな猫ね? 目が青いから、ブルーって名前つけたの?」
「もう忘れた。何でそんな名前にしたのか。ずいぶん昔に妹がつけた名前だから」
――昔……。どう見ても、自分と同じ年ぐらいの男の子にとって、忘れるぐらい昔って、いつ? それに……。
「カイ。妹がいるの? そんな話、初めて聞いた」
「今はいない」
「え?」
――話がかみ合わない。
カイの返事を不思議に思いながら聞いていた。