Devil's Night
「あ、猫ちゃん……」
逃げようとする猫に陽人が手を伸ばす。
「やめなさい! ハル!」
私の大声に警戒心が芽生えたのか、灰色の猫は差しのべられた小さな手を嫌うように、前足で陽人の手を払った。
「いたっ……」
陽人が顔をゆがめて、手を引っこめる。
「ママ……猫ちゃんが……猫ちゃんが……ひっかいた……ひっく」
私が今にも泣き出しそうな陽人に駆けよると、猫は昨夜と同じように庭木から塀の上へと登った。
「ニャーァ」
そして塀の上に座り、私たちを見下ろしていた。