Devil's Night
 
 完全に混乱していた。


「それは……例えば……猫から感染することもあるんでしょうか」


 自分でもバカげたことを聞いているのは、わかっていた。猫からうつる心臓病なんて聞いたことがない。けれど、今朝まであんなに元気だった我が子が、そんな絶望的な病気だなんて信じられず、あの猫との接触に原因があるように思えて仕方ない。


「お母さん、気持ちをしっかり持ってください」


 案の定、ショックでおかしくなったと思われたのかも知れない。


「この病気は先天性のもので、感染して発症するようなものではありません」


 医師は私の精神状態を危ぶんでいるのか、私の目をしっかりと、のぞきこむようにして続けた。



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