Devil's Night
初老の医師に案内され、院長室に入った。
広い部屋の大きなデスクで書類を書いている中年の男性は、自分よりはるかに年上である医師に目をやり、
「治療方針の話じゃないから、君はもうはずしていい」
と言った。
担当医が憮然と部屋を出て行く。そして、ふたりきりになった途端、院長が、
「お子さんはこのままでは助かりません」
と、断言した。
直視しないようにしてきた現実を再び突きつけられ、全身がふるえ始める。
「かと言って、外国へ移送すれば体力を消耗します。手術どころかドナーを待つ体力も残らないでしょう」
「それはもう聞きました。だから、どうしろっておっしゃるんですか?」
できることがあるのなら、とうにやっている。できることがなくて、絶望しているというのに……。悲しみと一緒に憤りが込み上げ、自分の目が潤むのを感じる。その私に向かって、院長は1通の封筒を差し出した。