Devil's Night
陽人の病室で待っていた母が、
「省吾さん、すぐに帰って来れるの?」
と、心配そうに聞いてくる。
「多分」
曖昧に答えながら、今、陽人を救えるのは私しかいないのだと自分に言い聞かせた。ベッドのそばに立って、しばらくの間、陽人の青白い顔を見ていた。もう、じっとしていられなかった。
「お母さん、私、出かけなくちゃならなくなったの。すぐに戻るから、陽人に付き添っててくれない?」
「出かけるって……こんなときにどこへ……」
母が怪訝そうに顔をくもらせる。
「すぐに戻るから」
そう答えて、病院を出た。この非合法である取引を受け入れるべきかどうかの決心がつかないまま。