Devil's Night
「だが、さっきも電話で絵莉花の無事は確認できた。『リリちゃんが一緒だから平気』って笑ってたよ」
絵莉花は時々、こちらが驚くほどの気丈さを見せることがある。少しだけ安心した。
「陽人は?」
いきなり尋ねられ、ドキリと心臓が踊る。
『誰かに話した時点で、この取引は無効です』
院長の脅迫めいた強い視線が、脳裏によみがえる。
「ね、寝ています……」
咄嗟にウソをついた。
「そうか」
声を聞きたかったのだろう、夫は少し残念そうだった。
「今度こそ絵莉花を取り戻すから。陽人のこと、頼む」
私はこの病院に入る決心すらつかないまま、
「はい……」
と答えてケータイをたたんだ。