Devil's Night
 
 私の人生がカイにつながっていくような気がして恐ろしかった。


「どうしたの? こんな時間に。どこか具合でも悪いの?」


 私のことを心配してくれる香織の顔は、昔と変わらない。カイが私の手を握ったことなど、気にしていないように見える。あんなに悲しそうな顔をしていたのに、まるで記憶をリセットされたみたいに、微塵のわだかまりも感じられなかった。


「た、大したことないの。ここまで来る間によくなったから、もう帰ろうかと思って」


「そうなの?」


「ええ。香織こそ、こんな時間にどうしたの?」


そう尋ねると、彼女は白い頬をピンク色に染めた。


「私、櫂斗さんの夜食、差し入れにきたの。急に持ってきてくれ、なんて言うのよ。ワガママでしょ?」


口ではそう言いながら、嬉しそうにニコニコ笑っている。


「よかったら、美月も一緒にお茶していかない? スコーンを焼いてきたから」


その言葉に戸惑った。


「ううん、もう遅いから、やめとくわ」
< 233 / 359 >

この作品をシェア

pagetop