Devil's Night
「そんなこと言わないでよ」
香織は私の腕を抱くようにして引っ張る。
「私が櫂斗さんに叱られちゃう。友達甲斐のないヤツだって」
空港のときと同じセリフ、同じ笑顔。香織が洗脳された操り人形のように見え、ゾッとした。
「ほら、こっち」
救急外来の横に関係者専用と表示された通路があり、そちらに向かって腕を引かれた。
「香織。私、ほんとに……」
「あ。お疲れ様でーす」
香織が看護師たちに明るく声をかける。
「なんだ、北浦先生の奥様のお友達だったんですね」
最初に私に話しかけてきた看護師が、納得したように微笑んだ。