Devil's Night
16. フライトナイト
デスクで分厚い本をめくっていたカイが、おもむろに顔を上げた。柔和な笑顔を浮かべて。
「待ちかねたよ」
その言葉と笑顔は、香織に向かって投げられたものに違いないのに、カイは私がここに来ることを知っていたような気がしてならない。
「香織。きみはもう帰っていい」
突き放すような言い方に香織の表情がくもる。
「僕は美月と話がある」
「はい……」
彼女はそこに紙袋を置いてとても寂しそうに部屋を出た。