Devil's Night
「北浦総合病院までお願いします」
運転手が「はい」と返事をしただけで、世間話や明日の天気の話はしてこないのは、私が深刻な空気をまとっているからだろうか。私も、黙ってずっと窓の外を見ていたが、何も考えられない。
重苦しい沈黙の内にカイの病院に着き、お金を払って車を降りた。もう秋だというのに、湿った生暖かい風が吹いている構内は、シンと静まりかえっていた。
2日前と同じように、夜間出入口の前に立ち、今度は迷わず、自分の意志で中に入る。香織が現れることはなかった。