Devil's Night
「美月。だいぶ僕に近づいてきたね」
ゾッとしながらも、静かに笑っているカイの肩に手を置き、爪先だって顔を近づけた。
「あ……っ」
唇が触れる直前に、両方の二の腕をガシリとつかまれている。
「美月。愛していない男にキスするのって、どんな気分?」
冷たい瞳が私を見つめる。
「やめて……」
カイの腕からのがれようと、必死でもがいた。
「思い出してごらん。本当に僕を愛してた頃を」
強引に唇を重ねられた。目の焦点が合わなくなり、体の力が抜けていく。
――まただ……。
閉じたまぶたの裏に映像が浮かび始めた。