Devil's Night
そのとき、私の気配に気づいたようにカイが振り返った。と同時に、彼の腕から灰色の猫が飛び降りる。
――ブルー……!
私はあわてて扉の影に身を潜めた。
――まさか、カイは猫としゃべってたの?
見てはいけないものを見てしまったような気がした。恐ろしくて、そこから動けない。早くこの場を離れたいのに、足が凍りついたみたいに動かなかった。
不意に目の前の扉がユラリと揺れ、その隙間からブルーの顔がのぞいている。
「ニャア」
あっ、と声を上げそうになって、私は両手で自分の口をふさいだ。
猫はその蒼い瞳で私を一瞥すると、ゆっくりと頭を引っこめた。室内でカイが動く気配はない。
――ここにいてはいけない。
そう直感した私は急いで階段を降り、ゴーストアパートを離れた。