Devil's Night
 
 ひとりになった少女は森の中へ逃げこんだ。羽織っている青い紗のストールをなびかせ、漆黒の林の中を風のように走っていく。まるで、昼間に自分の庭を走るように。


 金色に光るミミズクの目。青白く光るフクロキノコ。静まり返った森には、少女の短い息遣いと草を踏む音だけが響いている。


 リアは追っ手との距離を確認するように、何度か振り返った。怒号と松明の群れは、足元さえ見えない闇の中で徐々にその速度を落としていく。夜の森に慣れていないから。


 少女は悠々と針葉樹の林を抜けた。やがて走るのをやめ、呼吸を整えるようにゆっくりと歩き出す。


「ここまで来れば大丈夫……」


 彼女が小さく息をついたとき、背後でヒュッと風が鳴った。
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