Devil's Night
 
 カイによく似た美しい顔が、驚いたように振り返る。


……誰もいない。


 少女は安堵するように微かに笑ったが、2、3歩歩いたところで、急に前にのめり、地面に両膝をついた。その背中には深々と矢が刺さっている。

 
――熱い……。


 彼女の感じている痛みが私の中によみがえってきた。 


――熱い……。


 背中の右側が燃えるようだ。このうずき、しびれるような痛みを知っている。


――やっぱりこれは私なんだ……。


 あきらめと絶望の狭間でそう実感した。
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