Devil's Night
 
 わからないことは、カイが教えてくれた。カイは暇さえあれば、拾ってきた本を読んでいたせいか、とても物知りだったから、私の質問には何でも答えてくれた。ただ、私はモラルというものだけは誰からも教わらなかった。多分、カイの中にもまだ道徳心はしっかりと育っていなかったせいだ。心が成長する前に私たちは捨てられてしまったから。


 そんな私たちの娯楽は、放火だった。乾いた洗濯物や物置小屋を燃やし、大人たちが、大あわてで火を消すのを見て笑った。ボヤだけでも十分楽しい。私が笑うと、カイも嬉しそうに笑っていた。音楽もスポーツも、友だちすらいない生活をしている私たちにとって、放火は唯一の遊びだった。
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