Devil's Night
そんなとき、隣町で養父を見かけた。
『ウチの荷物を積んだ船が沈んだ。もう、おまえたちを養うお金がないんだよ』
そう言って私たちを置き去りにした養父は、後妻らしい若い女と一緒に立派な馬車に乗っていた。贅沢な絹のドレスをまとった若い女の腕には赤ん坊がいる。
「お金がなくなったんじゃなくて、私たちが邪魔になったんだね」
――だからって狼のいる森に捨てなくてもいいのに……。
特に感慨もなくそう思いながら、ふとカイを見ると、いつもは感情を露にしない彼が、ぼろぼろと涙をこぼしていた。