Devil's Night
 
 私はどうしていいかわからなくて、カイの手を握ったが、いつものように笑ってはくれない。廃屋に戻ってからも、カイはひとこともしゃべらなかった。深く傷ついているのだとわかる。彼を慰めたいけれど、その時の私は人の心を癒す術を知らなかった。


 私はカイに顔を近づけ、彼の唇を舐めた。獣が傷口を舐めるように何度も何度も。


「くすぐったいよ、リア」


やっとカイが笑った。


「リア。僕はもう誰のことも信じない。おまえ以外は誰のことも」


「私も」


そう言って微笑むと、カイは私を強く抱きしめてきた。そして、その日、私たちは初めて裸で抱き合った……。私たちにとって、寂しさや悲しみを埋められる相手はお互いしかない。カイの体温を素肌に感じながら、『一生離れない』と思った。
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