Devil's Night
 
 私は、冷たい床に横たわる、その気高い横顔に見とれた。しばらくはそれで紛らわすことが出来た痛みが、再び襲ってくる。


「はぁ……」


 息が苦しい。


――私は神父様のように安らかに“最期”を迎えられるのだろうか。


 不安になったとき、『ガタン』と音がした。群集によって蹴破られた入り口に、カイが立っているのが見える。彼は古びた箱を抱えていた。それは彼が古道具屋から盗んできた薄気味悪い鉄製の箱で、いつもは森の奥の秘密の場所に隠してある。カイはそれを取りに行っていたのだと知った。


 古めかしい箱をテープルに置き、カイは黙って床にしゃがむと、黒い床板の上に大きな円を描き始めた。それは、時々、遊びで書いていた魔法陣。

 
『最後まで書くと悪魔が現れてしまうからね』


いつも途中まで書いては、カイはそう冗談ぽく言って、笑いながら消していた。


「できたよ、リア」


それまで決して完成させたことのないマジックサークルを、カイが初めて書き上げた。
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