Devil's Night
 
 扉のなくなった入口から、森に入っていく彼のうしろ姿が見えた。


 遠くで雷鳴がしている。その音はどんどん近づいて来て、窓の向こうが青白く光った。それからしばらくして、床がガタガタと揺れ始める。

 
――カイは悪魔と契約を結んだんだ……。


 そう直感した。


――私はどうなるんだろう。


 心細くなって、神父様を見た。苦しみも迷いも感じさせない静かな死に顔。


――私もあなたの逝った場所へいけるかしら。 


 何とか手を伸ばし、神父様の顔に触れる。冷たい……。それでも、不思議と安らかな気持ちになった私は、しっかりと神父様の手を握った。


 横たわっている床がバラバラに砕け、崩れるのを感じた。体がどこまでも落ちていく。猫を抱き、神父様の手を握ったまま……。
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