Devil's Night
――私は暗示にかかっているのだろうか。
今は、リアが私の前世の姿だと確信している。
――もし、夫が、あの神父様の生まれ変わりだとしたら……。夫は、健康な子どもを犠牲にしてまで陽人を救うことを望まないかも知れない。あの神父様の魂を宿して転生した夫なら。けど、私は……。
選択の重さが改めてのしかかる。十分、悩んでここへ来たつもりだったのに……。
そのとき、部屋の隅で電子音が小さくピーとなった。カイが私から離れ、届いたばかりのFAXを眺めている。
「美月。あまり時間がないようだ」
「え?」
「ハルの容態がよくない。一刻も早く人工心臓をつけるか、こっちへ転院させるか決めなきゃならない」
――人工心臓………。
夢と現実が交錯しているような状態の中、再びガケから突き落とされた気分だった。
カイが艶然と微笑んだ。
「ドナーのピックアップはできてる。美月がハルを助けたいなら、僕は喜んで手伝うよ。もう報酬ももらったからね」
――報酬……。口づけひとつで……。
本当にそれしか求めないというんだろうか。カイの意図は計り知れない。
「どうする?」
まっすぐ見据えられて、聞かれたが、すぐには答えられなかった。
「少し……考えさせて……」
カイが黙ってうなずいた。