Devil's Night
19. ディスターブ
 
 私はひとりになるために廊下へ出た。記憶がよみがえってしまったせいで、答えが見えなくなっている。夫なら、誰かの犠牲と引き替えにわが子を助けるという選択をしないと確信したからだった。でも、私は……そう簡単に陽人の命を諦めることが出来ない。


――省吾さん……。


 階段に腰を下ろし、両手で顔を覆った。苦しみ、身の置きどころがないように、寝返りを繰り返す陽人の姿がまぶたに浮かぶ。思い出すだけで、自分の身が焼かれるような苦しみに悶える思いだった。
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