Devil's Night
陽人を失いかけている私には大きすぎる衝撃だった。
「もう出発しないと飛行機に間に合わない」
夫が時間にせかされるようにつぶやく。多分、ギリギリまで私に連絡すべきかどうか、迷った末の電話だったのだろう。連絡が取れないことで私が混乱するのを防ぐため……。
けれど、不幸続きの私の中には、最悪のシナリオしか出来上がらない。
「またかけるから。絶対に絵莉花じゃない。いいね?」
夫は私の不安を取り除くように言い残し、電話を切った。が、私はあまりのショックに、思考回路が分断されたみたいに何も考えられなくなっている。薄暗い階段で、通話の切れたケータイをずっと耳に押し当てていた。