Devil's Night
 
――結局、陽人の病気を打ち明けることはできなかった……。


 けれど、夫からの電話でわかったことがある。この上、陽人まで失ったら、私は生きていけないということだ。


――カイにしか陽人は助けられない。


 決心した私は、取り憑かれたようにカイのいる部屋へと引き返し、その扉を開けた。


「カイ……。ハルを助けて……」


 部屋に入って彼の前にひざまずいた。


「お願い……します」


 悪魔の前に土下座する私に、カイのスラックスがゆっくりと近づいてくる。


「誰かが犠牲になるよ?」


 冷たい声が背中に降る。


――わかってる。けど、私だって絵莉花を奪われた……。


 自分の心がどんどん黒くにごっていくのを感じる。カイの思惑どおりに。


「お願い。ハルを……」


 彼の足にすがって涙を流しながら、これが本当の私なのかも知れないと思った。
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