Devil's Night
すぐにじっとしていられなくなり、立ち上がって、目的もなく部屋の中を歩き回った。意味のない徘徊をすることで、少しだけ気持ちが紛れる。
ふと立ち止まり、キャビネットに整然と並ぶ医学書や分厚い論文らしき冊子の背表紙を眺めた。移植に関する蔵書もたくさんある。
その中の1冊を手にとって開いてみると、びっしりと英語のつまったページに添えられた生々しい臓器の写真が目に飛びこんでくる。
――陽人も今、こんな風に胸を切り開かれているのだろうか。
写真を直視できなくなって、すぐに閉じ、棚に戻す。深いため息をついてソファに戻ろうとしたとき、ハイヒールのかかとが何かに引っかかった。
――何だろう。
50cm四方のカーペットを敷きつめたフロアのデスクのうしろの1枚だけ、角が変色し、わずかにめくれ上がっている。
――ここにヒールが当たったんだ……。なに?